知的生産の技術
「知的生産の技術」
(梅棹忠夫、岩波新書)
(【尾灯】写真) RICOH Quarterly HeadLine Vol.29 2020 秋
パワーポイントが職場に入り込み、いつの間にか支配権を掌握した。パワーポインターはその作成に追われ、キレイな資料を黙々と量産する。それによって人間の訴求力・理解力が高まり、判断・創造の質が向上する…。はずだったが、果たしてそうだろうか。キレイの追求、つまり手段が目的と化していないか。パワポのスライドの原型は京大式情報カードだと思う。学生時代、梅棹忠夫・京都大学教授の「知的生産の技術」に憧れ、厚手のB6判カードを買い込み、アイデアや引用を書き込んでは独り悦に入った。その際、大事な作業はカードの分類や並べ替えであり、その違いでストーリーが大きく変わる。翻ってパワポはどうだろう。スライドの順番は発表者が規定したまま。1枚に詰め込むだけ詰め込んだストーリーなきスライド群は、不味い幕の内弁当のようだ。「とりあえず食材を詰め込んでおけば、上司に叱られまい」といった魂胆が透けて見える。リモートワークになり、パワポをプリントアウトしない人が増え、書き込みも風前の灯火。労働資本を大量投下したパワポが「使い捨て電子紙芝居」ではもったいない。(N)